戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語⑥ -高校生 空を飛ぶ-

高校三年の夏の終わり、まず航空自衛隊 航空学生の試験が始まった。

1次試験の学科、2次試験の身体検査など順調にクリアし、実機で行う第3次の操縦適性検査に進むことになった。

地元から特急列車で2時間ほどの距離にある航空自衛隊基地にひとりで赴き、その日は米軍駐留時の忘れ形見のような、古いかまぼこ型の隊舎に前泊した。 

翌日は輸送機に乗せられ、試験場所となる静岡県 藤枝市近くにある静浜基地に到着した。

全国各地から集まった受験生との約一週間の共同生活が始まった。

何もかも初めての体験だったが、子供のころから少年野球の遠征で団体生活には慣れていたので、生活面においては不安はなかった。

翌日から、早速試験に向けた航空機操縦要領のレクチャーが始まった。

実機による試験は4回あったが、今となってはこの短期間の教育でどのくらい知識を吸収し、どのくらい上空でその成果を発揮できたか記憶が定かではない。

しかし、最後の4回目の飛行の出来事は少し覚えている、

全課目を終了すると、ご褒美?として、前席の試験官が宙返りや錐もみなどの曲技飛行をやってくれる。

上と下が激しく入れ替わったり、海に向かってクルクルと回転しながら落ちていったりと、ジェットコースターの何十倍のスリルを体験した。

降りてきてから試験官に「曲技飛行はどうだった?」と尋ねられた。

私は素直に「怖くて目をつぶってしまいました!」と即答した。

この一言が余計だったのかもしれない。

1月終わりに発表された結果は不合格だった。

第一目標は防衛大だったため、この不合格は、さほど大きなショックではなかった。

しかし、この航空学生3次試験不合格が、後々、波紋を呼ぶことになるのであった。