戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語⑩ -青春のZippoライター-

次第に防衛大着校日が近づいてきた。

これから刑務所のような生活が待っているのだと思うと、今のうちに青春を謳歌しておかなくては、と強く思うようになっていた。

そうなると男子は単純なもので、中学時代のクラスメートの女子を誘って夜の街に出かけた。

彼女は、すぐ隣の女子高に通っていて、男友達を誘って彼女の高校の学校祭に遊びに行く程度の仲だっだ。

小さな壊れそうなくらい古い家に住んでいて、家の前にはいつもダンプカーが止まっているような家庭環境だった。

とりわけ美人というわけではないが、飾らない話しやすい雰囲気があった。

高校卒業後は、JRの車内販売の売り子として就職することがすでに決まっていた。

街中のレストランで食事をしたあと、落ち着いたカウンターバーでお酒を飲みながら楽しい時間を過ごした。

下心見え見えの私に対して、彼女の方が一枚上手だったようだ。

はっきり覚えていないが、彼女に上手くかわされて、この日はあえなく玉砕したような

記憶がある。

彼女は、会計を済ませバーを出る私に対し、その店のオリジナルZippoを買ってプレゼントしてくれた。

「防衛大に行っても頑張ってねっ」と。

私にとって、ほろ苦い青春のZippoとなった。

防衛大入学以降、しばらく彼女とは手紙のやりとりをする関係が続いたが、いつのまにかそれも消えてしまった。

きっとどこかで幸せに暮らしているはず。と思いたい。