朝6時30分。
廊下の天井スピーカーが「ブーン」と鳴る。
その瞬間、目がぱっと開く。
起床ラッパが鳴る直前、スピーカーからのかすかな音に反応して目が覚めるのだ。
起床ラッパが鳴った瞬間、「おはようございます」と怒鳴り声に近い声を出して、ベッドを飛び起きる。
直ぐにOD色の作業着に着替えると、自分の毛布やシーツを、これでもかというくらい綺麗にたたまなくてはならない。
ミリ単位の整頓が求められる。
そして部屋を飛び出し、駆け足で舎前に整列する。
その間、たった2分しかたっていない。
日朝点呼が終わり自室に戻ると、先ほどきれいにたたんだ毛布やシーツが無いことに気が付く。
急いで、4階の自室から窓の下をのぞくと、哀れ、寝具がすべてぐちゃぐちゃになって地面に散乱している。
日朝点呼中、4年の当番が部屋を巡回し、少しでもきれいにたたまれていない寝具は罰として窓から放り投げられてしまうのだ。
急いで毛布などを取りに行き、再びきれいにたたみ直す。
しかし、すぐに担当場所の清掃に行かなければならない。
少し遅れていくと、監督役の2学年が待っていて「遅い!!!」と怒鳴られ、罰として腕立て伏せが始まる。
一通り掃除が終わると、その2学年による重箱の隅をつつくような点検が始まる。
少しでも拭き残しがあると、「これでやったんかぁぁぁ!!!」と怒鳴られ、終わるまで開放してくれない。
やっと清掃から解放され、食堂に行くのも一苦労だ。
すれ違う全ての上級生に敬礼をしなくてはならない。
敬礼は軍隊の基本である。
敬礼をし忘れようものなら「オイお前、今、欠礼したな」「お前の対番だれだ」「後で対番と一緒に後で俺の部屋に来い!!!」となる。
朝食どころではない。
朝から上級生の指導という「焼き」を入れられて、8時からようやく日課が始まるのだ。
毎朝、毎朝、このような光景があちこちで繰り広げられる。
犬や猫と同じだと思った18歳の春である。