戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第76 -ビンタの区隊長-

防大出身のM区隊長はとにかく指導と称してビンタをする人だった。

大勢の同期がM区隊長から強烈なビンタを食らった。

全体MTGの場で犬猿の仲の二人が小競り合いを始めた時に一発。

沖縄研修で、翌朝、寝坊して集合時間に遅れてきた者にも一発。

一夜二日の演習場での戦闘訓練で、少し間抜けなG候補生は薬きょう受けのファスナーを開けっ放しで突撃を敢行して、空薬きょうを野原に全部落としてきてしまった。

その時のM区隊長の怒り様は凄かった。

ビンタどころか、M区隊長は小銃の銃床(肩に充てる部分)で思いっきりG候補生の頭をぶん殴ってG候補生が吹き飛ぶ瞬間を見てしまった。

物品愛護の精神なのか、あるいは戦場でのちょっとしたミスが命取りになることを体罰をもって指導したかったのか。

今のご時世では決して許されない指導がまかり通っていた。

私自身も何がきっかけだったかよく覚えていないが一発食らった記憶がある。

しかし、私は人徳のあるそのM区隊長は嫌いではなかった。

それから十数年後、すっかり偉くなったM元区隊長と再会することがあった。

何気なく当時のビンタの話をしたら、M元区隊長は苦虫をつぶしたようなイヤな顔をしていた。

偉くなってちょっと反省したのだろう。