戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第78 -空砲をぶっ放す-

大阪の南にある演習場で行われた一夜二日の戦闘訓練の時だった。

攻防二手に分かれて夜もぶっ続けで訓練が行われる。

攻める方だった私は、夜間、仲間らと迂回して敵陣地を攻める計画を立てた。

敵陣を見下ろす丘に近づいたところ、真っ暗闇の中に乗用車が止まっていた。

アベックが無断で演習場の中に入ってきて、お楽しみ中なのだろか?

そう考えた私たちは、ちょっと驚かしてやろうと小銃を持ったままその車を取り囲んだ。

車の中に人がいたかどうかは分からなかったが、そのまま皆、一斉に敵陣地に向けて小銃をぶっ放した。

空砲といえども夜間は発射時に小銃の先から火炎が見える。

今考えると、ちょっとやりすぎだったかも知れない。

 

この戦闘訓練を終えると私たちは夏季休暇に入った。

私は防大入学以来、初めて実家へは帰らなかった。

失恋の傷はまだ癒えていなかった。

夏休みの前半は東京出身の同期の家を泊まり歩いた。

後半は、奈良に戻ってきてMちゃんと琵琶湖に行ったりなどして楽しく過ごした。

もちろん実家に帰って母親の手料理でも食べていた方リラックス出来たが、意地でも帰らないことで自分が親離れしたような気持ちになった。

22歳の夏だった。