隊付教育を終えた私たち操縦要員40名は操縦教育が行われる山口県防府北基地に向かった。
40名の中に一緒に商社マンになることを夢見たK候補生もいた。
妊娠した彼女と入籍し、単身で飛行教育を受けることとなった、
最寄のJR防府駅に私たちは降り立った。
なかなかの田舎である。
防府南基地では高卒で入隊する新隊員教育も行われている。
駅前で地元のヤンキーと新隊員の間の小競り合いがよく行われているような所だった。
防府北基地に到着した私たちは、一瞬でその緊張感を感じとった。
初めて遭遇する航空学生たちの鍛え上げられ真っ黒に日焼けした身体とキビキビした動きは異様に映った。
彼らは高校卒業後、防衛大や一般大よりも高い基準の操縦適性検査をパスして2年間この防府北基地で教育を受けていた。
操縦に関しては防大には絶対負けてはならないというのが彼らの暗黙の合言葉だった。
そんな彼らとこれからパイロット学生として一緒に訓練を受けるのである。
上空には練習機が着陸訓練を繰り返している。
こんなの自分が操縦できるのか?というのが率直な感想だった。
日が短くなり冷たい北風が吹き始める田舎の風景に不安だけが鳴り響いた。