戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第95 -初ジェットで着陸をキメる-

静浜基地を発った私たち10名は、第二初級操縦課程のため、福岡県芦屋基地にやってきた。

最寄り駅に到着すると迎えの自衛隊バスに乗り込み、そのまま基地へ向かう。

その途中、上空をジェット練習機が飛行しているのが見えた。

今までのプロペラ機と比べて、格段にスピードが速い。

飛行場の上空を急旋回して着陸するジェット練習機を目の当たりにして、こんなの操縦できるのだろうか?と不安に感じた。

防府北基地で飛行訓練を受けていたコースBの10名と合流し、2つのコースに再編成された。

そして私は第2飛行隊に配属された。

コースの担任教官からは、今までのプロペラ機の事は一切忘れろ!早くジェット機のスピードに慣れるように、と訓示があった。

1か月の座学教育を終え、私たちのコースBの初フライトが行われた。

初フライトでは、ジェット練習機のスピードにまだ慣れていないため、着陸は教官によるデモを体験して終わるのが通常だった。

私は、何度か教官による着陸のデモを経験した後、教官から「自分で着陸して見ろ」と言われ、自ら着陸操作を行った。

内心、どうせ教官が一緒に操縦かんを持っているのだろうと思っていたため、怖さは感じなかった。

プロペラ機に比べ風の影響などをあまり考慮する必要がなくなったため、かえって着陸はやり易かった。

私と一緒にフライトルームに帰ってきた教官は、周りの学生や教官に、初フライトにもかかわらず私が一人で着陸していたと、得意げに話していた。

特に何も感じなかった。

これからの不安の方が大きかった。