戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第127 -アラート待機所のお化け-

アラート待機となると外国の不明機が日本に近づくとすぐに離陸できるようにアラート待機所で24時間待機する。

F-4は2人乗りの戦闘機のため、4機分8名のパイロットが一緒に寝泊りする。

朝に上番すると日中はテレビを見たり、好きな雑誌や本を読んで過ごす。

その間、5分以内に離陸できるよう完全装備のままである。

浴槽にお湯を貯めるが誰も風呂には入らない。

冬期は、耐水服という完全防水のスーツを着たままなので、翌日になると自分の体臭で顔を背けたくなる。

夜間であってもすぐに離陸できるように、2機分4名のパイロットはソファーで横になったままである。

残りの4名のパイロットは、別室のベッドで寝ることができる。

ある日、隣で寝ている先輩後席パイロットのいびきがうるさく寝られないことがあった。

私は、いびきを止めるため、その先輩を何度も足で蹴っていた。

翌日、その先輩が起きてきて、「昨夜、お化けが出た」と言うのである。

私は、内心、自分が何度も先輩を足で蹴ったから、お化けと勘違いしたのだと確信した。

しかし、もちろんその事は先輩には打ち明けなかった。

これがアラート待機所のお化け事件の真相だが、私以外誰も知らない。