戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第144 -新婚家庭への襲撃-

ハワイでの海外挙式を無事終え、通常どおり飛行隊での業務に復帰した。

飛行隊には新婚家庭を襲撃する変わった風習があった。

飛行隊ナンバー2の飛行班長M3佐が若い頃、陸の孤島と呼ばれる茨木県百里基地で勤務した頃からの伝統だった。

基地の周辺に居酒屋やスナックすら無い百里基地官舎では、飛行隊同僚の官舎に押しかけ、若い奥さんたちをホステス代わりに皆で飲む風習があったらしい。

私が三沢基地官舎で新婚生活を開始すると、すぐにこの襲撃にあった。

見張り役の若手パイロットが夜に私の官舎の電灯が消えるのを確認すると、他の者たちに連絡する。

すると、皆で集合して官舎のドアのピンポンを連打し、突入する。

電灯が消えるのを待つのは、奇襲された新妻がパジャマ姿のまま皆を接遇しなけらばならない状況を作り、皆でパジャマ姿の新妻を拝むためである。

何事かと電気をつけ、官舎のドアを開けると、「おじゃましまーす!」とM3佐を筆頭に若手パイロットたち10名くらいが一升瓶を持ってなだれ込んできた。

そして夜遅くまで酒宴が続く。

おかずはもちろん新婚ほやほやの新妻である。

しかも、これが一回限りで終わらない。

私の場合、3日間連続で襲撃を受けた。

最後にはもういい加減にしてくれ!という気持ちになった。

その後、一つ下の後輩が結婚した時は、一週間連続で襲撃が行われた。

もちろん私は先頭になって襲撃犯に加わった。

こうして、地方の官舎生活が始まって心細く感じている新妻の心のケアをしているのである。