ゴールデンウイークは故郷に戻った。
高校同級生で防大卒業ダンスパーティのパートナーであったYちゃんに会うためである。
楽しく喫茶店で食事でもしようかと思ったが、どうやら雲息があやしい。
遠距離に耐えられないと…。
彼女はそれほどではなかったけれど、自分の方がどんどん熱を上げていったというのが本音だろう。
振られてしまった。
傍から見ると、喫茶店で男から別れを告げられて、ぽろぽろ涙を流す女性のように見る。
内心ずるいと思った。
泣きたいのはこっちなのに。
全国を転々とする自衛官にとって、これだけはどうしようもない。
これ以上関係を続けることはできない。
あきらめることにした。
しかし問題が一つあった。
今回の休暇中に二人で遠くにあるリゾートホテルに一泊する予定で予約を入れていた。
結局、それは行くことになった。
不思議な関係である。
一泊旅行は思いっきり楽しんだ。
帰りの電車でも仲良く、あと数十分後には別れてしまうカップルとは思えない様子だった。
駅前のデパートの隅で最後のお別れをした。
「僕はパイロットになる夢を追い続ける」
「もし、お互いが必要であれば、またいつかどこかで会うことがあるだろう」と未練がましく伝えて別れた。
知らず知らずのうちに大人の階段を上った瞬間だった。