戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第69 -北の国から 失恋-

ゴールデンウイークは故郷に戻った。

高校同級生で防大卒業ダンスパーティのパートナーであったYちゃんに会うためである。

楽しく喫茶店で食事でもしようかと思ったが、どうやら雲息があやしい。

遠距離に耐えられないと…。

彼女はそれほどではなかったけれど、自分の方がどんどん熱を上げていったというのが本音だろう。

振られてしまった。

傍から見ると、喫茶店で男から別れを告げられて、ぽろぽろ涙を流す女性のように見る。

内心ずるいと思った。

泣きたいのはこっちなのに。

全国を転々とする自衛官にとって、これだけはどうしようもない。

これ以上関係を続けることはできない。

あきらめることにした。

しかし問題が一つあった。

今回の休暇中に二人で遠くにあるリゾートホテルに一泊する予定で予約を入れていた。

結局、それは行くことになった。

不思議な関係である。

一泊旅行は思いっきり楽しんだ。

帰りの電車でも仲良く、あと数十分後には別れてしまうカップルとは思えない様子だった。

駅前のデパートの隅で最後のお別れをした。

「僕はパイロットになる夢を追い続ける」

「もし、お互いが必要であれば、またいつかどこかで会うことがあるだろう」と未練がましく伝えて別れた。

知らず知らずのうちに大人の階段を上った瞬間だった。