戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第248 -タッチアンドゴー-

羽田空港の滑走路の間にあるオフィスで窓の外の景色を眺めるのが好きだ。

誘導路から滑走路に旅客機が進入しようとしていた。

どこへ行く便だろうか?

沖縄?北海道?そらともヨーロッパ?

搭乗するお客様たちは、旅行だろうか?出張だろうか?

お客様はきっとこれから向かう先のことに胸を躍らせているに違いない。

コックピットのパイロットは離陸を開始するため、スロットルの自動ボタンを押す。

この時、パイロットは覚悟を決めなければならない。

大型の旅客機がゆっくりと加速を始める。

もう後戻りは出来ない。

何百人という乗客の命を預かって目的地まで安全に飛行を続けなければならないと。

そんなパイロットの気持ちが手に取るように分かる。

そんな最高の景色を横目で見ながら私は赤い翼の大手航空会社で働いていた。

赤い翼の会社では「元戦闘機パイロットの○○さん」と私の経歴を尊重してくれる懐の広さがあった。

つい数ヶ月前までの辛い日々が嘘のようだった。

私は人生のタッチアンドゴーをきめて、再上昇したのだった。