戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第68 -だまれぇ、ジジィー-

幹部候補生課程は防大と違い課業外は何をしても自由である。

平日から私服に着替え奈良の街に飲みに行くこともできる。

夜の点呼までに帰隊すればよい。

部屋は4人部屋で、部内選抜のやや年上の候補生と50歳くらいの年配の候補生も一緒に寝泊りした。

部隊経験の無い防大卒にとって彼らは、お兄さん的存在だった。

彼らは単身での入校を要領よく楽しんでいた。

自室で隠れて酒を飲んだり、夜はランニングシャツとステテコ姿で廊下を歩き回っていた。

一般大卒の候補生たちは自衛隊式のお作法を一から叩き込まれるので大変だった。

ある日、彼らが食堂で食事をとっていると、血気盛んな防大卒たちが、食事のマナーがなっていないと、彼らが座っている椅子を蹴りあげていた。

防大卒が一年時に上級生から受けた指導そのものである。

防大卒からすると、たった一年で防大卒と同じ階級になれるなんて、ふざけるなということだ。

われわれの同期で「広島の狂犬」と恐れられたK候補生がいた。

ある夜、屋外で行われた点呼で50代の候補生たちがやや騒がしかった。

突然「だまれぇ、ジジィー」と怒鳴り声が聞こえてきた。

K候補生が、50代の候補生たちを怒鳴りつけたのである。

一触即発状態となった。

結局、騒ぎは区隊長によって収められた。

防大卒は、部隊経験はないけどプライドだけは高かった。