この物語の最初に書いたように人生というのは不思議なものである。
もう2度と航空の世界にかかわらない覚悟で自衛隊を飛び出したにもかかわらず、こうして今、再び航空会社でパイロットの安全運航スキルに関する教官として活躍させていただいている。
もし、空の神様というものがいるとしたら「お前は空の安全のために尽くしなさい」と軌道から外れた私の人生をもう一度、航空の世界に戻してくれたのではないかとついつい考えてしまう。
自衛隊時代、同期のパイロットは戦闘機部隊などでパイロットや飛行隊長などとして華々しく活躍しているにもかかわらず、私は閑職と言われている教育部隊での勤務が多く自分のキャリアを悲観したこともあった。
しかし、その教育部隊での経験が、今の赤い翼の航空会社におけるインストラクターとして活躍する礎になっていることは間違いないようだ。
「神様がいる説」でないとしたら、人間というものは知らず知らずのうちに自分の苦手なものを避け、自分の得意なものに近づこうとする傾向があるのかもしれない。
だから、私がこうしてパイロットの教官として空の安全に貢献しているのは必然だったのかもしれないという考えもある。
まったく人生というものは不思議なものであるが、一方で、案外合理的なものかもしれない。
兎にも角にも、この「防衛大学校物語」はいったんこれで終了にしたいと思う。
これまで読んでくださった方に感謝申し上げる。
もし、この防衛大学校物語が再開されていれば、それは私の人生に再び大きな転機が訪れたことを意味する。
きっと私はそれを知らず知らずのうちに望んでいるのだと思う。
皆さんと再会することを楽しみに、静かに待ちたい。(以上)