2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧
ランキング参加中小説 novels 2年生になると陸海空要員のほかに専攻学科も分かれる。 この時、参考にしたのが部屋長の姿だった。 1学期は、陸上要員で応援団リーダー部副団頭、2学期は海上要員で少林寺拳法部の主将と、なかなか硬派な4年生が部屋長だっ…
ランキング参加中小説 novels 2年に進級するときに陸海空要員が決まる。 防大に入学する前年に映画「トップガン」が封切られ、話題となっていた。 一年生の夏にアンケート調査を行うと75%が航空志望であった。 しかし航空要員になれるのは25%だけで、半分…
ランキング参加中小説 novels 防大生には都合のよい言葉がある。 「バレなければ何をしてもいい」という言葉だ。 だから喫煙や無断私服外出が後を絶たない。 「バレたら潔く責任をとる」という言葉が都合よく省略されてしまっているのだ。 ある休日、K学生…
ランキング参加中小説 novels 防大は小原台の丘のてっぺんに建っている。 東京湾を独り占めできる絶景の場所である。 防大の周囲には特に何も無いが、唯一、立派なお屋敷が建っている。 そのお屋敷は、日本で超有名な大親分のご自宅だった。 よく、若い衆が…
ランキング参加中小説 novels ついに自分も上級生のシバキを食らう羽目になった。 朝の服装容儀点検中に後ろから誰かが私のかかとを蹴った。 振り返ると空手部主将の4年生だった。 「靴磨いたんか!」 靴は一通り磨いていいたが、言い訳は許されない。 「い…
ランキング参加中小説 novels 1年の秋に一週間、富士演習場で訓練が行われる。 ここで小銃を携行してほふく前進など戦闘訓練の基礎を学ぶ。 演習場内にあるかまぼこ型の古い簡易隊舎に宿泊するが、毛布を見るだけで体中が痒くなる。 しかし、一年生にとって…
ランキング参加中小説 novels 普通の大学生ならカリキュラムに余裕があり、自由な時間をアルバイトやサークル活動に費やすことができるのだが、防大生は、毎日びっしり授業があり、教場に行かなくてはならない。 これは義務であり、ずる休みをすることは許さ…
ランキング参加中小説 novels 夏休み明けは、一学年の気が緩んでいないかと、上級生の指導が一層厳しくなる。 そんな中、同じ小隊のO学生が上級生に私服外出をしていることがバレてしまった。 その夜、O学生と同じ小隊の一年生全員(二十数名)が隊舎の屋上…
ランキング参加中小説 novels 2学期が始まった。 久々の同期生たちとの再開を喜ぶ。 辞めると言っていたK学生も帰ってきた。 ところで1年生の間、喫煙は許されないが、それでも隠れて毎日1、2本吸っていた。 上級生に見つかれば大変な制裁が待っている。…
ランキング参加中小説 novels アメフト部の監督は、民間人である。 横須賀市で幼稚園を運営する園長をやっていた。 しかし、その風貌は園長先生とは程遠く、今で言うところの、反○そのものである。 顔は日焼けして黒く、頭髪は茶色のパーマである。いつも真…
ランキング参加中小説 novels 故郷で過ごした休暇もあっという間に終わった。 あれだけ待ち望んでいたのに、実家で過ごす時間は案外退屈なものだった。 両親に空港まで見送られ、私は防大のある横須賀に向けて出発した。 防衛大学の夏季休暇は8月の1か月間…
ランキング参加中小説 novels 実家に帰ってきてからゴロゴロと怠惰な生活を楽しんだ。自分の部屋には、高校時の教科書や参考書がまだ取ってあった。 いつ自分も防大を辞めるかもしれない不安から、母に「捨てないで」と言ってあった。 母が参考書などをロー…
ランキング参加中小説 novels 羽田空港から地元の空港に着くと、そこから故郷まで2時間の特急列車に飛び乗った。 羽田空港搭乗時から純白の詰襟制服を身にまとっている。 他のお客さんたちが「商船大学の人かね」なんてコソコソ話をしているのが聞こえた。 …
ランキング参加中小説 novels 「しっかり、親孝行してくるように。以上、解散!」 夕方の課業終了後、当直の4年生の号令とともに、夏季休暇期間となった。 一年生はほとんどが地方出身者であり、それぞれの故郷に向けて出発した。 私は、同じ小隊(クラスの…
ランキング参加中小説 novels 7月の夏季定期訓練のクライマックスは6時間遠泳訓練だった。 これが終ると夏休みとなり、故郷に帰ることができる。 だが泳ぎが苦手な者にとっては、苦痛でしかなかった。 私は泳ぎは並みのレベルだったが、足首を手術した後の本…
ランキング参加中小説 novels 普通の大学生なら7月から夏休みだが、防大は7月の1か月間は夏季訓練期間となる。 まだ自衛隊を知らない一年生は、陸海空自衛隊の部隊研修に行く。 茨城県の航空自衛隊 百里基地に行って私はこの時初めて憧れのF-15戦闘機を間近…
ランキング参加中小説 novels 足の手術から1カ月半がたち、ようやくギプスを取る日が来た。 ギプスを取ると、ブラックジャックの顔ような手術跡とそこから髭のように黒い糸が生えていた。 まだ少し腫れているようだった。 ギプスをしている期間中、少し痛痒…
ランキング参加中小説 novels 毎朝、松葉杖をついて1人で教場に向かう。 手提げ鞄の代わりに、戦闘訓練で使う肩掛けのバッグをぶら下げながらテクテク歩く。 相変わらず一年は上級生に厳しく指導されているが、その生活にも少し慣れてきたようだ。 毎朝と毎…
ランキング参加中小説 novels 足首の手術後、故郷から母がやってきた。 1か月半ぶりの再開である。 遠くの故郷から、飛行機、電車、バスを乗り継いで自衛隊中央病院まで一人で来た母を気遣う繊細さは私にはなかったが、少しの嬉しさとバツの悪さを感じた。 …
ランキング参加中小説 novels 当時の自衛隊病院はまだ民間人に開放されておらず、診療も自衛官のみを対象としていた。 このため医師もいわゆる「対外試合」の機会が無く、医療技術も民間の医師と比べて低いのではなか、などど自衛隊の中で噂されていた。 自…
ランキング参加中小説 novels GWが終わり、大学生の一般教養に相当する授業も開始されるようになった。 ある日、毎週月曜日の朝に行われる服装容儀点検で隣の部屋の4年に目をつけられてしまった。 キツネ目に眼鏡の陰湿そうなその4年は、私に対し、罰として…
ランキング参加中小説 novels 入校から3週間がたち、日曜日に初めての外出が許された。 ただし、部屋長が引率しての外出である。 一学年のうちは私服による外出は許されず、制服を着用しなければならない。 朝8時に舎前で外出のための服装容疑点検が行われ…
ランキング参加中小説 novels 着校から2週間がたった。 しかし、いわゆる大学の授業はまだ始まらない。 毎日、OD色の作業着、弾帯と半長靴を履いて、基本教練と呼ばれる訓練を受けていた。 ここは大学ではなかったことを思い知らされる。 その横を退校者が私…
ランキング参加中小説 novels 防大生は皆、何かしらの運動部に入らなくてはならない。 いつもは怖い4年生が、毎晩一年生の部屋を訪れては自分の部活に入れと勧誘してくるのである。 アメフト部の4年生が勧誘のためによく私たちの部屋に来た。 「うちは若い女…
ランキング参加中小説 novels 朝6時30分。 廊下の天井スピーカーが「ブーン」と鳴る。 その瞬間、目がぱっと開く。 起床ラッパが鳴る直前、スピーカーからのかすかな音に反応して目が覚めるのだ。 起床ラッパが鳴った瞬間、「おはようございます」と怒鳴り声…
ランキング参加中小説 novels 入校式の夜。 夕方の点呼のため廊下に整列した一年生に対して、優しかった4年生たちが猛獣のように豹変する。 「これでお客さん扱いは終わりだぁ!」 「これから厳しく指導するので覚悟せよ!」 「辞めたい奴はすぐに去れ」 と…
ランキング参加中小説 novels 着校日からしばらくの間、新一学年は「お客さん」扱いだった。 上級生たちも、特段優しいというわけではないが、頼りになる先輩と言う感じだった。 掃除、洗濯、縫物、作業など生活の仕方について一から学ぶものばかりで、忙し…
ランキング参加中小説 novels 着校日、対番にこれから生活する部屋に連れていかれた。 部屋には部屋長という4学年が腕を組み仁王立ちで待ち構えていた。 「部屋長のKだ。ヨロシク」と。 部屋長のKさんは、私と同郷で応援団リーダー部の副団頭だった。 真っ…
ランキング参加中小説 novels 防衛大学校は、走水荘から徒歩10分くらいの近さだった これから寝起きすることになる学生隊舎の入り口には「祝、入校」と立て看板があり、桜がきれいに咲いていた。 一見和やかな入学式の風景だが、なぜだか「ヤバいところに来…