戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第249 -とりあえず最終話-

この物語の最初に書いたように人生というのは不思議なものである。 もう2度と航空の世界にかかわらない覚悟で自衛隊を飛び出したにもかかわらず、こうして今、再び航空会社でパイロットの安全運航スキルに関する教官として活躍させていただいている。 もし…

防衛大学校物語 第248 -タッチアンドゴー-

羽田空港の滑走路の間にあるオフィスで窓の外の景色を眺めるのが好きだ。 誘導路から滑走路に旅客機が進入しようとしていた。 どこへ行く便だろうか? 沖縄?北海道?そらともヨーロッパ? 搭乗するお客様たちは、旅行だろうか?出張だろうか? お客様はきっ…

防衛大学校物語 第247 -役員面接-

高層ビルの綺麗な会議室で最終役員面接が行われた。 面接ではなぜ自衛隊を辞めたのか?という点について多く聞かれた。 私は、理由を述べるとともに、最後に、航空自衛官はやはり空の仕事でなければ務まらないことを自衛隊を辞めた後痛感させられた。今は自…

防衛大学校物語 第246 -大手航空会社の面接-

1次面接は、羽田空港ターミナルに隣接した会社のオフィスで行われた。若い人事担当者と待ち合わせした私は、オフィスの入り組んだ奥にある面接が行われる小さな会議室に案内された。 そこに、同年代と思われる4名の男性がいた。 面接のインタビューを行うに…

防衛大学校物語 第245 -やっぱり空の仕事がしたい-

来年度の開園準備に関する業務について、要領を得ない私の態度に対し、バツイチ・子持ちで若い頃はバドガールだったという同僚に「50歳にもなってそんなこともできないのかぁ!」とののしられた。 もう限界だった。 許されるならもう一度空の仕事に戻りたい…

防衛大学校物語 第244 -園のもめごと-

ある保育園で人間関係のもめごとが起こっていた。 園のナンバー2の主任が同志の保育士たちと、園長の指導力の無さに反発しているのだった。 確かにその園長は少しリーダーとしてのマネージメント力に欠けているようなところがあった。 保育園の本質的な問題…

防衛大学校物語 第243 -保育園の闇-

その「親分肌」の60代の女性園長は、よく私に電話をかけてきた。 洗濯乾燥機をつけて欲しいだとかのおねだりである。 それをなおざりにしていると園長は癇癪を起して怒り出してしまうので、すぐに園に赴き御用聞きをするのが常となった。 行くといつもテーブ…

防衛大学校物語 第242 -保育園まわり-

1カ月の保育園での研修を終えて、私は久しぶりに会社に出勤した。 私はエリアマネージャーとして都市部の十数ある保育園を担当することとなった。 エリアマネージャーと言っても、園長などから施設の修理を頼まれたり、新しく導入した園児の登園管理システム…

防衛大学校物語 第241 -保育園の課題-

保育園業界は、待機児童の課題を抱えていたため、自治体は園児の受け皿となる保育園を沢山必要としていた。 入社した保育園の運営会社はこれに乗じて自治体からの補助金が比較的多い都市部に保育園を毎年幾つも開園して急成長したのだった。 しかし、保育士…

防衛大学校物語 第240 -保育園のお仕事-

息子が生まれた時も、夜泣きをあやす妻にいつも背を向けて寝ていた。 電車で泣き叫ぶ子供を見ると無性に腹が立つ。 こんな子供嫌いの私に保育士の真似事なんてできるのだろうか?と不安に思っていた。 兎にも角にも、女性保育士たちの控室の奥に小さな物置で…

防衛大学校物語 第239 -保育園-

友人で同年齢のK大アメフトOBのHさんに働き口について相談した。 Hさんの人脈はとにかく広かった。 その結果、T大アメフトOBで現在保育園の運営会社を経営するI氏に話をしてくれることになった。 I氏と私は関東アメフトOB会でたまたま隣の席となり、名刺を交…

防衛大学校物語 第238 -任侠者の男気-

自衛隊を辞める前、近所の居酒屋である男性と知り合いになった。 見るからにカタギで無いような10歳以上年上の年配の方だった。 私が防衛大出身の戦闘機パイロットということでえらく気に入ったようだ、 その方は、私くらいの世代なら聞いただけでビビる某都…

防衛大学校物語 第237 -大手航空会なんて無理無理-

名古屋の宇宙ベンチャーでお世話になる直前に、ある現役自衛官と新宿の居酒屋で接触した。 彼は、個人的に企業の採用情報に詳しかった。 彼とものすごく親しかった訳ではなかったが、彼は快く会ってくれた。 勝手に自衛隊を飛び出たにもかかわらず、窮地に陥…

防衛大学校物語 第236 -宇宙ベンチャー-

名古屋の宇宙ベンチャーの社長さんにも働き口がないか頼んでみた。 自衛隊を退官する前、浜松基地で勤務していた時に、宇宙ベンチャーの説明会に参加して以来の関係だった。 スポンサーである大手航空会社から資金を調達した直後のためか、私がバイトをしな…

防衛大学校物語 第235 -恐怖のバイト-

大規模な転職フェアーにも参加してみた。 地元の観光ホテルのブースがあり、丁寧に対応してくれた。 思わず、田舎でホテルの「布団敷き」でもするのも悪く無いかなあ、って頭をよぎった。 一方、電車とバスを乗り継いで重工業コンビナート地区にある物流倉庫…

防衛大学校物語 第234 -日雇いの本領-

今日の派遣先は駅前にあるビジネスホテルの建設現場だった。 どこの工事現場でも毎朝8時に朝礼とその後に体操がある。 各職種ごとに縦列で整列するが、端からその各列の先頭が本日の作業の注意点を簡単に発表しなくてはならない。 元幹部自衛官の性だろうか…

防衛大学校物語 第233 -ついに日雇い労働者-

次の仕事を見つけなくてはならないが、元パイロットなんて潰しが効かない。 とりあえず転職サイトに片っ端からエントリーして面接の機会を待った。 地元のハローワークにも通った。 比較的良い条件でも月給30万円である 元公務員だったため失業保険は適用さ…

防衛大学校物語 第232 -元幹部自衛官48歳無職-

自衛隊を中途退職して入社した会社は2カ月半で辞めてしまった。 無職の求職者となってしまったが、全くアテが無いわけでもなかった。 以前から相談に乗ってもらっていた転職エージェントの人から、鹿児島にある大学のパイロット養成学部で地上教官を募集して…

防衛大学校物語 第231 -物流倉庫送りの刑-

部長から成田空港から更にバスで数十分のところにある物流倉庫に行って、小さなワッシャーを袋詰めする作業を言い渡された。 小指の爪位のワッシャーを500個つづビニールの袋に一日中入れる作業である。 作業指示は例の同僚社員からメールで送られてくる。 …

防衛大学校物語 第230 -転職先での辛い経験-

今思うと完全にミスマッチだったと思う。 会社にとっては、元幹部自衛官はこんなに仕事が出来ないのか?と思っただろうし、私にとっては、新入社員をきちんと育成する余裕が全くな会社だった。 顧客から発注のファックスを受け取って、システム端末から発注…

防衛大学校物語 第229 -元自衛官はつらいよ-

真新しいスーツに新しいビジネスバッグを片手に日比谷公園に面した高層ビルにあるオフィスに出勤した。 心機一転、新しい人生の第一歩のはずだった。 社員が働くオフィスに入るのは初めてだが、案外質素でこぢんまりしていた。 特殊なアルミ製品の会社営業マ…

防衛大学校物語 第228 -自衛隊退職-

妻や年老いた母親と姉に、転職したい旨、話すと、皆、同じ反応だった。 あなたの人生なんだからあなたの好きなようにしなさい、と。 転職を反対されたとしても、私の意思は固かったに違いない。 このまま自衛官として定年まで勤めたとしても死ぬ間際に、こん…

防衛大学校物語 第227 -転職エージェントからの誘い-

私が幹部学校に異動してから今後の身の振り方について迷っている矢先、久々に登録した転職サイトの転職エージェントから私に直接連絡がきた。 防衛大卒だろうが、戦闘機パイロットだろうが、年齢のいった自衛官に転職エージェントからお声がかかることは珍し…

防衛大学校物語 第227 -大学院か?転職か?-

3年間の単身赴任を終え、私は自宅から幹部学校の航空研究センターに通った。 幹部自衛官を対象とした部内紙の歴史は古く、さまざまな情報を入手することが困難な時代に、指揮、戦略、部隊運用および兵器技術に関する情報を論文と言う形で読者の幹部自衛官に…

防衛大学校物語 第226 -失意の異動-

通常であれば2年勤務だが、パイロットの割愛候補者になってきたので航空教育集団司令部での勤務も3年目となつていた。 しかも、1佐職の課長だったため空幕から割愛には出さないと言われてしまった。 上司の部長からは、幹部学校で部内誌編集長のポストを探し…

防衛大学校物語 第225 -待機操縦者の救出作戦-

今度はある待機操縦者をフライトに復帰させるための行動を起こすことになった。 O3尉は、待機期間中に球技の事故で、片目の眼底骨折をしてしまい、視野が欠けてしまったのだ。 もう2年以上、療養していたが、後輩にどんどん先に越されてしまうため、私たち…

防衛大学校物語 第224 -若いパイロットたち-

ある飛行教育部隊だけがパイロット学生の罷免率か異常に高かった。 比較的、成績良好の学生を送り込んでいるのにである。 色々調べてみると、そこの教官三人衆がとにかく厳しいというのだ。 三人衆の一人は私に向かって「ダメな奴はバンバン、クビにしますか…

防衛大学校物語 第223 -女性戦闘機パイロット養成開始-

割愛で民間パイロットになるチャンスをもらえなかった私は、朝、車を運転しながらある決心をした。 戦闘機パイロットになりたいと希望している彼女にチャンスをあげようと。 オフィスに到着するなり、私はパソコンに向き合い、空幕に提出する彼女の戦闘機パ…

防衛大学校物語 第222 -パイロットの民間割愛制度-

半年前に私は大きな決断をしていた。 自衛隊パイロットの民間割愛制度に手を挙げたのだ。 昔から民間機のパイロットを熱望していた訳ではなかったが、割愛は転職先の良い選択肢だった。 しかし、割愛の候補者になると、その年の勤務評価は最下位にランクされ…

防衛大学校物語 第221 -女性戦闘機パイロットの選考-

それは男女機会均等法施行に基づく政府肝入りの案件だった。 航空自衛隊初の女性戦闘機パイロットを養成するというのである。 数名の候補者に対して空幕において意思確認が行われていた。 これまで輸送機や救難機の女性パイロットはいたが、戦闘機パイロット…