戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第234 -日雇いの本領-

今日の派遣先は駅前にあるビジネスホテルの建設現場だった。

どこの工事現場でも毎朝8時に朝礼とその後に体操がある。

各職種ごとに縦列で整列するが、端からその各列の先頭が本日の作業の注意点を簡単に発表しなくてはならない。

元幹部自衛官の性だろうか?私はその先頭に並んでしまった。

「暑くなってきたので、足場の確認を注意します」と違和感なく発表した。

今日の現場にはベトナム技能実習生が4名いた。

皆、19歳で、来日後、日本語学校で4カ月勉強して、今日が初仕事とのことだった。

私は彼らが英語くらい喋れるのかなと思い、英語で話しかけてみた。

しかし全く英語は喋ることは出来ず、日本語もたどたどしかった。

兎にも角にも、彼らとの共同作業が始まった。

今日の仕事はエアコンの配管を通すのがメインある。

私と技能実習生は身振り手振りと「OK」の合図でなんとか仕事をこなしていった。

昼になるとコンクリの壁が剥き出しの現場で昼食をとる。

その時、いわゆる「飯場の飯炊きババア」が社員さん用の味噌汁を作って待っている。

ベトナム技能実習生は、準社員待遇なので、弁当と味噌汁を貰える。

「飯炊きババア」は私たち派遣にも味噌汁を勧めてくれた。

こういう場合、有り難く頂戴するものが大人の対応だと思った私は味噌汁を頂いた。

しかし、ベテラン派遣労働者風の者たちはそんな事には全く関心を寄せる事なく、ベンチで横になって昼寝をしていた。

休み時間に少しでも体力を回復しておこうという考えなのだろう。

プロの日雇い労働者とはこういうものなのだと少し感心した。