戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第233 -ついに日雇い労働者-

次の仕事を見つけなくてはならないが、元戦闘機パイロットなんて潰しが効かない。

とりあえず転職サイトに片っ端からエントリーして面接の機会を待った。

地元のハローワークにも通った。

比較的良い条件でも月給30万円以下である

元公務員だったため失業保険は適用されなかった。

面接の機会はそうちょくちょくあるものでは無いので日雇いのアルバイトをする事にした。

防衛大入学以来、アルバイトなんてしたこと無かったが、バイトと言えば力仕事というイメージだったため、工事現場のアルバイトに申し込んだ。

最初の派遣先は、五反田の繁華街のビル工事現場だった。

収入が無いので朝5時に起床して、1人で大きめのおにぎりを2個作った。

贅沢は出来ない。

妻に迷惑をかけられないという思いが強く、そっと早朝の家を出た。

「雑工」といって、工事現場で出る銅線などのゴミを一日中収集して回る仕事だった。

ヘルメットに安全靴姿でコンクリート剥き出しのビル工事現場を歩き回った。

工事現場では長袖は基本なので、まだ6月だというのに蒸し暑かった。

ペアになった同じ雑工の人は丁寧に仕事のやり方を教えてくれた。

最初に入社した会社とは随分違うものだと思った。

根が真面目なので、働いている間は「自分の職務をこなさなくては」と一生懸命だった。

一日中8時間働いて1万円を貰った。

20日働いたとしたら20万円。

パイロットだった頃の月給の何分の一だろうか?

「仕事に貴賤は無い」とはいうものの、自衛隊の仲間にこの姿を見られたらどうしよう?と少し怖かった。

先の見えない日々が続いた。