戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第150 -3つの航空事故の記憶②-

隣の飛行隊で発生した航空事故からまだ2カ月しか経っていなかったが、2つ目の航空事故が私の目の前で発生した。

また私はマーボ幹部として滑走路脇にある小屋で勤務していた。

目の前に米軍の戦闘機がラインナップして、一機づつ離陸して行った。

しかし離陸滑走して行った2番目の戦闘機から突然ボンという音と黒煙が立ちのぼった。

当該機体のパイロット が浮き上がる直前にエンジン不具合のため緊急脱出を試みたのだ。

緊急脱出は成功したかのように見えたが、脱出した高度が低かったため、パイロットは、落下傘降下しながらかく座炎上する航空機の上に落ちてしまったのだ。

米軍戦闘機は予備エンジンの駆動用に人体に有害な物質を使用していた。

人間が触れると3日以内に発病するという。

そんなことお構いもなく、近くをジョギングしていた空自の隊員が、大変なことが起こったと燃え盛る機体に駆けつけて、中からパイロット救出したのだ。

その後、助け出されたパイロットは、治療のため米国本土の病院に移送された。

それからしばらくして、当該パイロットが死亡したことを聞いた。

ひどい火傷のため最後は指は一本しか無かったそうだ、

後日、飛行隊の廊下に一通の手紙のコピーが貼られていた。

亡くなった米軍パイロットの奥さんから、助け出してくれた空自に対する謝意の手紙だった。

新婚だったらしい。

そこには、感謝を表す美辞麗句が並べられていたが、私は内心、奥様の無念さや悲しみを感じざるを得なかった。

兎にも角にも、私はまたモーボで航空事故に遭遇した。

しかし、所詮、これも他人事だった。

すぐに自分の飛行隊で事故が起きるまでは。