戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第220 -パイロットの民間割愛制度-

大阪にある転職エージェントと電話でインタービューを行った。

航空自衛隊パイロットなので航空関係への転職を勧める、ついては大阪にある新興の格安航空会社が地上職を募集しているのでどうか?と勧められた。

一般にLCCの処遇は低く、希望する処遇との開きが大きいので転職することにはならないだろうと思っていた。

しかし、他に面接に応じてくれる企業なんかほとんどなかったので、とりあえずエントリーしてみることにした。

直ぐに面接が決まった。

関西空港にあるそのLCCのオフィスを見た時、少し驚いた。

パイロット、客室、地上職がそれほど広くないオフィスでごった返していた。

まるで野戦病院のような殺伐した雰囲気だった。

こんな騒々しいところでブリーフィングをしているパイロットは、本当に安全なのか?と思った。

成長過程にある会社にオフィスなどのインフラが追い付いていないという印象だった。

1次面接の相手は比較的若い女性のマネージャーだった。

是非、うちの会社に来てほしいというオーラーが出ていて好印象だった。

今回の2次面接は役員面接で運航本部長が面接官だった。

既に、健康診断も済ませてある。

特に何もなければ、このまま「内定」となるのだろうか?

運航本部長の口調はテキパキしていて、頭の回転が早い人の印象だった。

LCCを急成長させるためには、このくらいテキパキ仕事を進めないとやっていけないのであろうかと思った。

反対に、運航本部長は自分のテンポについてこられるか見定められている気がして、私は必死に質問に答えた。

途中、パイロットとして転職することは考えないのか?と質問された。

自衛官が直接、民間航空会社にパイロットとして就職できない紳士協定のことは十分承知していたが、今思えば、この点をもっと押せばよかったと思った。

パイロットとして就職できるのなら是非そうしたい、と。

それどころか私は次第に運航本部長の少し見下したような口調に違和感を感じ始めていた。

自分は本当にこの人の下で働けるのだろうか?と。

面接を終え、転職エージェントの方と電話で会話した。

私は、選考辞退を申し入れた。

自分が面接を通じて感じた素直な気持ちだった。

きっと、私はこの会社では高いモチベーションを持って活躍できないと。