戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第219 -転職エージェントの魔力-

唐突のようだが、自衛隊を辞めて転職をしたいと思うようになっていた。

防衛大学校に進学したのには2つの目的があった。

1つは、戦闘機パイロットになることである。

これは実現した。

もう1つは、大勢の隊員を率いる指揮官になることだった。

早い話が、この2つめの目的が達成する見込みがなくなっていることを薄々気が付いていた。

人事は「ひとごと」なので、理由はよく分からない。

しかし、組織から干されたと感じるような処遇をうけていた。

自分の処遇に納得できれば良かったのだが、どうしても納得できなかった。

指揮官になるチャンスが無くなれば、もう自衛隊にいる必要性が無くなったも同然だった。

自衛隊以外の一般企業でもっと自分は活躍できるはずだ、と思い込むようになり、転職エージェントに登録した。

しかし、現実はそんなに甘くなく、防大出身だろうが、戦闘機乗りだろうが、一般企業にとっては何の魅力はないようだ。

転職エージェントを通じて声がかかることはほとんどないか、あっても、自衛隊の職を賭してでもやるような仕事ではなかった。

でも転職エージェントの企業の採用情報を見ているだけで楽しかった。

自衛隊を辞めて、民間企業で活躍する自分を夢想することができるのだ。

こうしてどんどん転職の魔力に引き込まれていった。