戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第237 -大手航空会なんて無理無理-

名古屋の宇宙ベンチャーでお世話になる直前に、ある現役自衛官と新宿の居酒屋で会った。

彼は、個人的に企業の採用情報に詳しかった。

彼とものすごく親しかった訳ではなかったが、彼は快く会ってくれた。

勝手に自衛隊を飛び出たにもかかわらず、窮地に陥ったために現役に頭を下げるのは、我ながら情けないと思った。

しかし、そんなことを言っている場合ではなかった。

彼は私の自衛官時代の経歴を踏まえて、既に企業のホームページなどに掲載されているいくつかの採用情報を教えてくれた。

その中の一つに赤い翼の大手航空会社の採用情報もあった。

そんな大手企業に採用してもらえる訳は無いと、最初から諦めていた。

居酒屋で別れる前に、彼は自分の愚痴をこぼした。

それはパイロットばかり昇任していて、パイロットでは無い自分は冷や飯を食わされているというものだった。

私から見ると彼はうらやむほどの出世コースに乗っている一人である。

どんなに偉くなっても出世欲は消えないのだと内心思った。

航空自衛隊トップの航空幕僚長になり損ねた者は「なぜ自分が航空幕僚長になれなかったのか?なぜ自分は同期の2番手に甘んじなければならないのか」と悔しがり続けるということだ。

結局、航空自衛隊OBが所長を務める新興の安全保障シンクタンクに応募してみた。

怪しい情報商材を販売する会社が母体だったが、研究センターでの勤務経験のある私にとっては親和性のある、まともな職種のように思えた。

一縷の望みをかけて採用面接でそのOBに猛アピールしたが、結果は不合格だった。

またOBに救ってもらえなかったという気持ちだけが残った。