戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第232 -元幹部自衛官48歳無職-

自衛隊を中途退職して入社した会社は2カ月半で辞めてしまった。

無職の求職者となってしまったが、全くアテが無いわけでもなかった。

以前から相談に乗ってもらっていた転職エージェントの人から、鹿児島にある大学のパイロット養成学部で地上教官を募集しているとの情報を得ていた。

転職エージェントの方から、「今度その大学に行く用事があるので、一緒に売り込みに行こう」と提案を受けた。

私はその提案に一縷の望みをかけていた。

数週間後、鹿児島までの飛行機チケットを購入して、転職エージェントの方とその大学に向かった。

理事長と名乗る人と実質的な面接が始まった。

実はその理事長は元航空自衛隊の幹部自衛官であり、定年退官後、この大学の理事長の職に就いたという。

私は、その理事長は自衛隊の先輩として無職で困窮している私に救いの手を差し伸べてくれるはずだと思っていた。

しかし、その理事長は、なぜ私が自衛隊を途中で辞めたのかなど根ほり葉ほり聞くと、「そんな様子だと、うちの大学で働いてもすぐに辞めてしまうにきまっている。考えが甘い!他の会社で5年以上務まったら雇ってやってもいい」と説教をし始めたのだった。

その時の理事長の目は、昇任できずに晩年、司令部などで先輩風吹かせて後輩たち困らせている幹部自衛官、通称「困ったちゃん」そのものの目をしていた。

それでも私はここで食い下がる訳にはいかないと必死だった。

「どうか…どうか....雇ってくださいイイイイ~」と嗚咽も漏らしながら懇願したのである。

理事長は厳しい顔つきのままだった。

重苦しい雰囲気の中、私は飛行機で帰途についた。

後日エージェントから不採用の連絡を受けた。

元幹部自衛官、無職の48歳となった。