保育園業界は、待機児童の課題を抱えていたため、自治体は園児の受け皿となる保育園を沢山必要としていた。
入社した保育園の運営会社はこれに乗じて自治体からの補助金が比較的多い都市部を中心に毎年、保育園を幾つも開園して急成長したのだった。
しかし、保育士の処遇の問題もあり、保育士のなり手が少ないという現実もあった。
保育園の収入は専ら自治体からの補助金で賄われているため、国の基準に基づいた最低限の人数しか雇うことが出来ない。
このため、給料も低く抑えられ、毎日ぎりぎりのところでシフトを回していた。
自分の好きな日に休暇を取ることができる者などいなかった。
私は、1カ月間の研修を通じて、保育士の業務内容が処遇に見合ったものかどうか見極めたいと思った。
1カ月前まで、蒸し暑い工事現場で雑工として働いていた私にとって、クーラーが効いた綺麗な建物の中で仕事ができることは幸せだと感じていた。
トイレ掃除や雑草取りは全く苦には感じなかった。
今回の研修で、大切な他人の子供を預かる保育士の責任の重さを体験することはできなかったが、それを差し引いても保育士の処遇は妥当ではないかと感じた。
こうして私の1カ月間の「保育士見習い」は終了した。