戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第243 -保育園の闇-

その「親分肌」の60代の女性園長は、よく私に電話をかけてきた。

今回は洗濯乾燥機をつけて欲しいというおねだりである。

それをなおざりにしていると園長は癇癪を起して怒り出し、社長に電話で文句を言われてしまうので、すぐに園に赴き御用聞きをしなければならない。

その園に行くと、いつもテーブルを挟んで延々と園長の結論のないお話を聞かなくてはならない。

しかし、園長の話は毎回2時間ちょうどに終わることを発見した私は、毎回うわの空で話を聞きながら差し出された目の前のお菓子を堪能していた。

きっと話を聞いてあげれば、それだけでよいのであると私は思った。

私から見ると珍しく「リーダーシップ」と「男気」のある園長に思えたが、少し強引なところもあり、悪評もよく聞いた。

特に自治体の保育課担当者との折り合いが悪く、よく電話越しに喧嘩をしているらしい。

別件で自治体の保育課に行ったときに、保育課の女性係長から「あの生意気な園長を解任しろ」と言わんばかりに小言を聞く羽目になった。

保育園は、自治体による補助金によって成り立っているといっても過言ではない。

だから自治体保育課の立場は大きい。

何か問題があるとすぐに私のようなエリア担当は自治体の保育課に出頭を求められ、迅速な解決を約束させられるのだ。

自衛隊時代に課長を経験した私にとって、自治体の係長ごときに説教を食らうことになるとは…と思いながら、目の前で吠える女性係長の話をうわの空で聞いていた。

話を聞いてさえあげればいいと。