毎年、秋に大規模な演習が行われる。
この演習に浜松基地の飛行教育部隊も参加することになった。
そこで、教官と私たち学生がT-4練習機に乗って石川県小松基地に展開した。
私たちT-4練習機は仮想敵機役として基地に向かって侵攻し、これを航空自衛隊の戦闘機部隊が迎え撃つのである。
もちろん学生は後席に同乗するだけで操縦は前席の教官たちが実施する。
教官たちも今は年配のベテランパイロットだが、一昔前までは、部隊でバリバリ戦闘機で飛んでいた方である。
教官たちの血が騒ぐのも無理はない。
隊型を保持して侵攻する敵機役の私たちに戦闘機部隊が襲い掛かる。
後ろからF-15戦闘機が急降下して模擬ミサイル攻撃を行う様子が見えた。
あの機体には同期のF君が同乗していたはず。
いつも意地汚いF君だから、その報いを受けているのだと思った。
悪いことはするものではない。
因果応報というやつだ。
小松基地での演習参加は、普段、教官と学生という立場だった私たちにとって、航空自衛隊パイロットの先輩と後輩という立場で向かい合う貴重な機会だった。
毎晩、教官たちと小松市のスナックに「出撃」して、パイロットの飲み方も教えてもらったことは言うまでもない。