戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第223 -女性戦闘機パイロット養成開始-

割愛で民間パイロットになるチャンスをもらえなかった私は、朝、職場に向かう車の中である決心をした。

それは戦闘機パイロットになりたいと希望している彼女にチャンスをあげようと。

職場に到着するなり、私はパソコンに向き合い、空幕に提出する彼女の戦闘機パイロットとしての適否に関する報告書を書き直した。

1990年頃、米空軍初の女性パイロットが誕生した。

彼女は戦闘機パイロットになったが、その後、航空事故で命を落としたそうだ。

だから、今回の選考においても、「戦闘機乗りとしての適性が無ければ、絶対に下駄を履かせてはならない。政府肝いりの施策だろうが、無理に戦闘機に乗せると、結局は彼女を殺してしまうことになるのだから」と皆、思っていた。

私もそのことを十分理解していた。

本来はダメなモノをあたかも良い風に書き直したのではない。

彼女の過去の飛行成績をさらに詳しく調査・分析したのだった。

彼女が飛行教育部隊で学生として訓練を受けていた時の担当教官に直接電話をかけ、彼女の実際の飛行の様子を聞くことにした。

その結果、彼女は、少し他の者より進歩が遅いだけで、決して飛行感覚が劣っているのではないということが分かった。

私は、報告書にその旨を追記し、最終的に彼女は同期からの人望も厚く、戦闘機パイロットに適していると結論付け、司令官にハンコを押させた。

私の責任は重かったが、彼女にチャンスを与えたかったのだ。

結局、空幕は彼女を戦闘機パイロット候補者に選定し、訓練が始まった。

知り合いの教官に訓練の様子を聞くと、彼女は上手く出来なくて悔し涙を流すこともあったそうだ。

しかし、次第に上達し、最終的には他の男性パイロット学生よりも良い技量で課程を卒業したそうだ。

彼女は自分でチャンスをつかみ取ったのだ。