足首の手術後、故郷から母がやってきた。
1か月半ぶりの再開である。
遠くの故郷から、飛行機、電車、バスを乗り継いで自衛隊中央病院まで一人で来た母を気遣う繊細さは私にはなかったが、少しの嬉しさとバツの悪さを感じた。
片足をギプスを巻いて松葉杖を突いて現れた私の姿を見て母はどのように感じただろうか?
母は、私を案じて自宅近くの神社にお参りに行ってきたことを話してくれた。
神社のお守りと境内の小石を自分で裁縫して作ったお守り袋入れて私に手渡してくれた。
母は、縁かつぎのため、あちこちの石を持ち帰る癖があった。
以来、その時のお守りをずっと肌身離さず持つようになる。
自衛隊中央病院のある駐屯地で一般に開放するイベントが開催された。
学園祭みたいなものである。
「結婚したい理想の自衛官・・・・」
第1位は、防衛大卒の幹部自衛官と書かれていた。
悪い気はしなかったが、自分はまだ防衛大に入学したばかりの海のものとも山のものともいえない存在である。
その張り紙に背を向けて、再び階段を上がった。
退院の日になった。
お世話になった医師や看護師にお礼を言い、無断外出できないように取り上げられていた制服に袖をとおした。
2週間ぶりの帰校である。
再び始まる。