戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語第24 -松葉杖の足にキック-

毎朝、松葉杖をついて1人で教場に向かう。

手提げ鞄の代わりに、戦闘訓練で使う肩掛けのバッグをぶら下げながらテクテク歩く。

相変わらず一年は上級生に厳しく指導されているが、その生活にも少し慣れてきたようだ。

毎朝と毎夕に国旗掲揚と国旗降下が行われる。

その時、敷地内のあちこちのスピーカーから国歌が流れる。

全ての防大生は、たとえどこに居ようが、何をしてようが、一旦手を休め、国旗掲揚塔方向に向かって直立不動の姿勢をとらなくてはならない。

トイレの個室に居てもである。

毎日、タダで食事をして、勉強出来ることに対する感謝を示す意味なのか?ぐらいにしか思っていなかった。

ある日、居室に居て、周りは一年だけだったので、このお作法をふざけてやらなかった事があつた。

しかし、その私の姿はしっかりと応援団の部屋長に見られていた。

部屋長は部屋に突入してくるなり、松葉杖をついて片足立ちしている私の足を目がけて蹴りを放った。

哀れ、見事に私はバランスを崩して私はそのままベッドに倒れ込んでしまった。

まだ国を守るという意味は分からなかった。

タダより高い物は無いという事ぐらいしか思わなかった。