戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第199 -三線司令官-

那覇基地の司令部で課長としての勤務をスタートした。

部下は9名。

赴任するや否や最初の業務は、東日本大震災災害派遣のため那覇基地から航空自衛隊の隊員を送り出す業務だった。

また、司令官からの特命で、那覇基地津波被害に遭遇した場合、どのように司令部機能を維持して任務を継続するか、研究を命ぜられた。

実はこの司令官は悪い意味で有名人だった。

自分が頭脳明晰であると自負しているのか、部下を激しくののしる癖があった。

その一方、司令官として信じられない行為を平気で行っていた。

午後の数時間、司令官室のドアを閉めて、最近覚えた三線の練習を始めるのである。

私たち司令部の幕僚にとって、タイムリーに司令官に報告ができないことは死活問題だった。

そんな部下の苦労も気にせず、司令官室から三線の音色が聞こえてくるのである。

また、その司令官は元芸能人だったママがいる那覇の繁華街のスナックに入り浸っているという噂がたった。

私自身も職場の宴会の二次会でそのスナックに行ったことがあるが、確かにママは愛想が良く、男好きのする顔立ちだった。

自衛官が飲み屋に行くことは何も悪い事ではなかった。

しかし、その店の女性従業員に中国籍の者がいて、もしかしたら情報漏洩のターゲットにされているのではないかという懸念が表出したのである。

三線の件もあって、悪評に尾ひれがついて噂が中央に伝わったに違いない。

その後、司令官の行動について、防衛省内局の調査が入ったことを知った。

部下を苦しめる司令官は早くお引き取りいただきたい。