ついに自分も上級生のシバキを食らう羽目になった。
朝の服装容儀点検中に後ろから誰かが私のかかとを蹴った。
振り返ると空手部主将の4年生だった。
「靴磨いたんか!」
靴は一通り磨いていいたが、言い訳は許されない。
「いいえ」と答えるしか選択肢はなかった。
「消灯後、俺の部屋に出頭せよ」と空手部主将に宣告されてしまった。
その日ずっと授業や部活どころではなかった。
夜、消灯ラッパが鳴ると、空手部主将の部屋をノックする。
部屋に入ろうとすると、入室要領が悪いと何度もやり直しさせられる。
しまいには襟首をつかまれ壁にたたきつけられた。
30分ぐらいして、ようやく入室が許されると、「なぜ呼ばれたかわかるか?」と問われる。
「靴をきれいに磨いていなかったからですぅ」と答えるしかなかった。
「では、姿勢とれ!」と罰として腕立て伏せが始まる。
どれだけの回数と時間が経過しただろうか?
床に崩れ落ちては上体を腕でかろうじて支えるのを繰り返す。
腕立てをすると「3つの水たまり」ができる。
2つは、両方の手のひらの周りに汗でできた水たまりである。
そしてもう一つは顔の真下の床の上にも水たまりができる。。
汗と鼻水と涙が混じった水たまりである。
歯を食いしばり泣きながら腕立ては延々と続いた。
ただただ悔しかった。
防大生は犬や猫じゃないと。