卒業式には両親と姉が飛行機に乗って一家総出でやってきた。
父母にとっては一年生の入校式以来である。
入校式の帰りに私が可哀そうで涙した母は、さぞ誇らしい気持ちだったに違いない。
卒業式は海部総理を迎え盛大に行われた。
最後のクライマックスで卒業生代表の号令で制帽を高く放り投げて、式場から飛び出す。
なぜ卒業生が元気よく帽子を投げて、ダッシュで式場を後にするかこの時よくわかった。
決して、思い出深い4年間の防大生活を想っての行動ではなかった。
実は、卒業式の2~3週間前から連日卒業式の練習が行われる。
学校としては総理大臣の前でだらしない格好は見せたくないのである。
この連日の卒業式練習からようやく解放されるという気持ちで帽子を放り投げる自分がそこにいた。
自分でも意外だった。
卒業式が終わると、私は家族とともに故郷の実家に戻った。
その夜はYちゃんと再会した。
男性なら身に覚えがあるだろう、卒業式や長距離移動の疲れもあり、その夜は早く果ててしまいそうになった。
そこで私は何か他のことを想像して身体の摂理に懸命に抗った。
その時、私はこともあろうか卒業式に来られた総理大臣を想い出すことにした。
しかし、懸命の努力もむなしく、結局、私は総理大臣を想像しながら果ててしまった。
ほろ苦い青春の思い出である。