戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第44 -孤軍奮闘する留学生-

タイ王国からの留学生は、タイ陸海空軍の士官学校を卒業してから来日する。

1年間の日本語教育を受けた後、防大1年生として入校し、4年間小原台で教育を受ける。

このため年齢的には23歳くらいだが、防大1年時には他の日本人の学生と「差別なく」日本人の上級生に徹底的にしごかれる。

日本語もたどたどしい彼らが外国の士官学校で犬猫の扱いを受けることになる。

また、私は地方出身で幼少期から外国人に接する機会は少なかったが、日本の大都市では多くの外国人がいて、彼らに対する民族主義的な見方が根深くあることも知った。

本人がいないところで、留学生の陰口をたたく同期生をよく見かけた。

信心深く頭に神様が宿るというタイ留学生に対して、「風呂で洗髪しているときは

神様はどこにいるんだ?流されちまうだろう」と小ばかにする者もいた。

2年の夏季訓練で浜松基地に宿泊した時、2段ベッドがぎゅうぎゅう詰めの大部屋で誰かが夜話を始めた。

「ここの隊員馬鹿だなぁ」と話を切り出すと。

突然、どこからか「タイジン、バカジャナイ」と叫び声が聞こえた。

タイ留学生が「隊員」と「タイ人」を聞き間違えたのだ。

誰もフォローすることなく、しらけて夜話は終わりとなってしまった。

彼らは将来、タイ軍の高級将校として要職につくことになる。

いったい防大での4年間は、どのような思い出なのだろうか?