4年の最後は2人の一年生の部屋長になった。
初めて防大に着校して対面した応援団の自分の部屋長のことを想うセンチメンタルな部分は私にはなかった。
ただ、卒業式の前夜、1年生の部屋っこと3人で寝室で酒を酌み交わすことにした。
就寝時間となり、真っ暗な寝室のカーテンを開けると、眼前に見事な東京湾の夜景を一望することができる。
冬の澄んだ空気に都心や横浜の夜景、そして千葉のコンビナート群の明かりが瞬いて見えるのだ。
ちょっと洒落てフランスパンやワインを購入して、防大最後の夜を堪能した。
しばらくしてハプニングが起こった。
部屋のドアが開き、懐中電灯を持った当直の指導教官が見回りで入ってきたのだ。
どこの部屋でも同じようなことをしている。
なのに卒業式の夜に見回りに来る指導教官はいったいどういう神経をしているのだろうか?
即刻、夜宴は中止させられ、私は指導官室で事情聴取を受ける羽目になった。
私は翌日卒業になるので不問となった。
気がかりなのは、残された1年生二人だった。
もし校内飲酒として処罰されるようなことがあれば、すべて私の責任だが、その責任を私は取ることができない。
翌朝、何事もないように部屋っこが私の航空自衛官の制服にアイロンをかけ、靴を磨き、部隊章や階級章などきちんとつけてくれた。
私の卒業後、その2人の一年生がどうなったのか全くわからない。
申し訳ない。