戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第86 -落下傘降下訓練-

私たちコース「B」の20名は千葉県習志野市にある陸上自衛隊 第一空挺団にやってきた。

航空機から緊急脱出した時に備え、今日から2週間、ここで落下傘降下の訓練を受ける。

訓練の最終目標は、70mの塔から落下傘を開いた状態で降下し、安全に着地することである。

2週間のうち、ほとんど毎日、柔道のような受け身の練習だった。

落下傘があるとはいえ、地面に接地するときのスピードはかなり速い。

防大1年時、自衛隊中央病院に靱帯断裂のため手術・入院したが、病室には、習志野の空挺隊員が多く入院していた。

皆、接地時に足を骨折したためだった。

期間の途中、20mの高さからの飛び出し訓練が行われた。

バンジージャンプのようにゴムが付いているので地面に落下はしないが、20mという高さは人間が一番恐怖心を感じる高さらしい。

O候補生は、頭が真っ白になって助教の言うとおりにしなかったため、手に大けがを負ってしまった。

最後に70mの塔からの落下傘降下が行われた。

70mの高さまで吊り上げられると、はるか向こうの海辺に幕張の人工スキー場が見えた。

高所恐怖症ではないが、さすがに怖いと思った。

私は接地時に思いっきり後頭部を地面にたたきつけられた。

この2週間の受け身の訓練は何だったのか?

全く訓練の成果を発揮できなかった。

Y候補生は、テンパって風に対して不適切な操縦をしたためか、塔に絡まってしまった。

O候補生もY候補生も操縦訓練を続けていくうちに途中で技量免(クビ)になった。

どんな状況でもパイロットには冷静さが求められるのである。