私たちコース「B」の20名は千葉県習志野市にある陸上自衛隊 第一空挺団にやってきた。
航空機から緊急脱出した時に備え、今日から2週間、ここで落下傘降下の訓練を受ける。
訓練の最終目標は、70mの塔から落下傘を開いた状態で降下し、安全に着地することである。
2週間のうち、ほとんど毎日、柔道のような受け身の練習だった。
落下傘があるとはいえ、地面に接地するときのスピードはかなり速い。
防大1年時、自衛隊中央病院に靱帯断裂のため手術・入院したが、病室には、習志野の空挺隊員が多く入院していた。
皆、接地時に足を骨折したためだった。
期間の途中、20mの高さからの飛び出し訓練が行われた。
バンジージャンプのようにゴムが付いているので地面に落下はしないが、20mという高さは人間が一番恐怖心を感じる高さらしい。
O候補生は、頭が真っ白になって助教の言うとおりにしなかったため、手に大けがを負ってしまった。
最後に70mの塔からの落下傘降下が行われた。
70mの高さまで吊り上げられると、はるか向こうの海辺に幕張の人工スキー場が見えた。
高所恐怖症ではないが、さすがに怖いと思った。
私は接地時に思いっきり後頭部を地面にたたきつけられた。
この2週間の受け身の訓練は何だったのか?
全く訓練の成果を発揮できなかった。
Y候補生は、テンパって風に対して不適切な操縦をしたためか、塔に絡まってしまった。
O候補生もY候補生も操縦訓練を続けていくうちに途中で技量免(クビ)になった。
どんな状況でもパイロットには冷静さが求められるのである。