戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第91 -初ソロフライト-

静浜基地で約半年間、飛行訓練を受けることになり、私は東京立川での訓練時に合コンで知り合ったMちゃんと月2回くらいのペースで会った。

最初のデートは、合コン時に約束したディズニーランドだった。

まだ短大生だった彼女は、私にとって妹のような幼さがあった。

ディズニーランドの夜景に映る彼女の笑顔は、厳しい飛行訓練のことを少しだけ忘れられる安らぎであった。

最初の10回くらいの訓練のうちに単独飛行(ソロフライト)に出なくてはならない。

ここまで単独飛行に出られなかった場合は、パイロットとしての適性なし、としてクビになってしまう。

地上にいるときは、イメージフライトで手順やチェックポイントを体に叩き込む。

飛行隊隊舎の横に離着陸のパターンが小さく地面に描かれたイメージフライト練習場がある。

そこで、あたかも練習機に乗っていることを想像しながら離着陸パターンをゆっくり歩く。

しかも、何人も同時にイメージフライトをやっているので、傍から見ると異様な風景に映る。

夜は隊舎にコックピットを模した簡単なトレーナーがある。

通称「ゆりかご」だ。

そこに座って、何度も何度も手順を流す。

ついに初ソロフライトの日が来た。

私と同期のK3尉が先陣を切った。

教官から、この2人であれば絶対大丈夫だ、と思われたことが嬉しく、自尊心を掻き立てた。

わずか30分くらいの離着陸のみのフライトだった。

静岡の温暖な4月の風に乗って、私は、ついに「パイロット」になった。