戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第186 -宇宙飛行士選抜試験-

JAXAが宇宙飛行士を募集する。

普通ならば倍率1000倍の狭き門である。

しかし、航空幕僚監部からこの選抜試験に積極的に応募するようにとのお達しがあった。

このことから私は、今回の募集でJAXA航空自衛隊パイロットから宇宙飛行士を採用しようとしているのではないかと勘繰った。

航空自衛隊パイロットが30人応募したと仮定すると、倍率は30倍である。

こうなると宇宙飛行士になることも決して夢物語ではない気がした。

身体検査は近くの自衛隊病院で無料で受けることができた。

博多でTOEICの試験を受けた。

肝心の腰の状態は、ジョギングを楽しむ程度に回復していた。

体力増強を兼ねて、休日には基地の屋内プールで水泳を行った。

泳ぎながら、自分が宇宙飛行士になったことを夢想した。

どんなに素晴らしいことだろうと、楽しくて仕方がなかった。

応募してから1か月くらい経過したある日、官舎のポストに封筒が差し込まれていた。

JAXAから書類選考の合否に関する連絡だった。

期待しながら封書を確認するとそこには「不合格」の文字があった。

ここで私の宇宙飛行士になる夢は途絶えた。

というか、40歳過ぎの大人が「不合格」を言い渡されること自体へこんだ。

最終的に防大の1つ後輩のパイロットが宇宙飛行士に選ばれた。

空自のパイロットが選ばれるだろうという読みは当たっていたということだった。