戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第110 -最初で最後の経験-

基本操縦課程における最終試験は2回ある。

両方とも事業用操縦士免許取得のための試験を兼ねている。

1回目は、訓練空域での試験。

2回目は、計器飛行の能力を確認するための試験である。

両方とも事業用操縦士免許取得のための試験を兼ねていた。

多少失敗はあったが、両方とも何とかクリアーした。

これで基本操縦課程の卒業が決まった。

私の担当教官は年配の方で、独特の雰囲気がある方だった。

私はこの担当教官の「異端児」なところが自分と似ていて好きだった。

担当教官との最後のフライトの時、私は担当教官から「缶コーヒー持ってけ」と言われた。

何のことか分からなかったが、言われるがまま私は、缶コーヒーをフライトスーツのポケットに入れて離陸した。

訓練空域での科目を終了して基地に帰投する時、後席の教官が操縦を代わると言うので操縦を代わった。

そして教官は私に「コーヒー飲んでいいぞ」と言った。

私は、酸素マスクを外して、缶コーヒーを飲み始めた。

最後のご褒美のつもりなのであろう。

私は、周囲の景色を堪能する余裕などなく、無我夢中で缶コーヒーを飲みほした。

コックピットの中で缶コーヒーを飲んだのはこれが最初で最後のことだった。

古き良き時代のパイロットの粋な生き様を体験した出来事だった。

そして両親が見守る中、私はついに航空自衛隊のウイングマークを胸に付け、パイロットになった。