戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第187 -携帯通話履歴を提出せよ!-

ある新聞に妙な記事が掲載された。

ある大国が国内で弾道ミサイルの発射試験を行ったというものだった。

しかし、その内容に見覚えがあった。

数日前、秘匿情報として司令部の情報幕僚が司令官に対して行った情報ブリーフィングの内容と同じだった。

この事は市ヶ谷の防衛省で大問題となった。

秘匿情報を新聞記者に漏らした者がいるというのである。

その記者が防衛省の番付きであった約2年間に防衛省および各航空幕僚監部で勤務した者全員に対して調査が行われた。

福岡の司令部にも司令官や部長をはじめ数名の該当がいた。

私もその当時航空幕僚監部で勤務していたので該当者に含まれていた。

該当者は、携帯電話の通話履歴を提出するよう求められた。

その記者と繋がっていたかどうか携帯電話番号で確認するためだ。

私自身、新聞記者との繋がりは全く無かったが、男子たるもの個人の携帯電話の通話履歴なんか簡単に開示できるものではない。

みんな少しはやましいところがあるのだ。

任意なので、一旦は、みんなで相談して提出の求めに応じないことにした。

しかし、司令官が提出しない者は俺が直接説得すると言い出したのだ。

人権なんて無く、もう従わざるを得なかった。

観念して、みんな携帯電話会社から自分の通話履歴を取り寄せたのだった。

結局、通話履歴には電話番号しか書かれていないので、たいして心配するほどのことでは無かった。

その後、自衛官に対し、必要な場合は携帯電話の通話履歴を提出する旨の誓約書の提出が義務付けられた。

恐ろしい事である。