戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第209 -情報屋としての活躍-

横田基地の米空軍司令部での勤務は、上司がいる訳でもないので、かなりイージーなものだった。

自宅からは電車を乗り継いで2時間15分かかるので、毎朝9時半くらいにオフィスに到着する。

米軍内のケーブルテレビで放送されているNFLの試合経過を気にしながら、今日の業務を確認する。

と言っても、特に仕事があるわけでもない。

毎週木曜日に市ヶ谷の航空幕僚監部に出頭し、部長に米軍司令部の動きなどについて報告しなければならない。

また、金曜日には在日米空軍司令部の各部長がA司令官に対して業務の報告を行う定例会議が開催される。

その2つの会議で報告する「ネタ」を収集するのが、毎週のルーチーンだった。

ネタ集めのため米軍司令部の向かいに引っ越してきた航空総隊司令部を訪れる。

航空総隊司令部の部長や課長に米軍の動向について情報提供し、その見返りとして航空総隊司令官などの動きに関する情報を仕入れる。

そしてそれを米軍側に提供する。

まるで「情報屋」だった。

英語を話せる幹部自衛官があまりいなかった頃の連絡官の存在意義は、米軍とのコミュニケーションの橋渡し的なものだった。

しかし、航空総隊司令部が横田基地に移転してきてからは、連絡官の存在意義は情報のハブとしての重要性に変わってしまったと感じた。

昼に米軍ジムで汗を流し、夕方早々に帰宅の途に着く。

働き盛りの男性が何のプレッシャーもなく暇を持て余していた。