戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第210 -情報屋としての活動-

当時、東シナ海にある日本の領土に関して周辺国と揉め始めた頃だった。

日本政府としては、その領土を巡って両国が衝突した場合は、当然、米国が日本と一緒に行動してくれるものと期待していた。

しかし、時の米国大統領は慎重姿勢を崩さず、その領土が日米安保の適用範囲内であることの明言を避けていた。

自衛隊側から在日米軍に対して一緒に行動してくれるよう猛アピールが続いていたが、本国の大統領が周辺国との対立を招かないよう慎重な態度である以上、在日米軍としても、その態度を保留していた。

私は、もし領土を巡る軍事衝突が起こった時に、本当に在日米軍は一緒に戦ってくれるのか?と、個人的に興味を抱いた。

そこで、毎週金曜日に開催される司令官に対する報告会で、意図的にその島嶼の領有権を巡るネタを放り込んで、司令官の反応を見ることにした。

司令官は、若い頃から日本勤務が多く、大の日本通であった。

このため司令官は、日本と周辺国が小さな島嶼の領有権を巡って争いが加熱していることを正しく理解しているようだった。

しかし、在日米軍の最高指揮官としては大統領の意図に従わなければならないと、発言があった。

私はやはりそうかと思った。

でも最後に、司令官は個人的な意見と前置きして、「俺たちはやる時はやるんだ」と小声で捨てゼリフのように私に向かって確かに言った。

私は、これは司令官自身の本心だと気がついた。

米国は政治的に難しい立場に立たされているが、自分達、在日米軍自衛隊と共に日本を守り抜くんだという司令官の本音が聞こえた瞬間だった。

もちろん、その事は、市ヶ谷に報告したことは言うまでもない。