戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第222 -パイロットの民間割愛制度-

その当時、私は大きな決断をしていた。

自衛隊パイロットの民間割愛制度に手を挙げたのだ。

昔から民間機のパイロットを熱望していた訳ではなかったが、割愛は転職先の良い選択肢だった。

しかし、割愛の候補者になると、その年の勤務評価は最下位にランクされるらしい。

自衛隊を去る者に良い評価を与える必要がないからだ。

このため、割愛は成功して就職できれば良いが、民間に就職できなかった場合、「裏切り者」扱いを受け、評価も下げられてしまう諸刃の剣であった。

部長に相談すると、反対されるかと思われたが、すんなり部隊推薦を得ることができた。

この年、全国から8名の割愛候補者が推薦されてきた。

しかし、実際に就職できるのは4名程度である。

全ては受け入れる航空会社のニーズにマッチングするか否かである。

年齢的に私は最年長だったので条件としては良くなかったが、最年長だからこそ自衛隊としては優先的に割愛に出してくれるのではないだろうかと期待を寄せていた。

半年後、航空幕僚監部の人事計画課から「割愛不可」の連絡が届いた。

理由は、私が今、本来1等空佐が就く課長職に座っているためであつた。

1佐職の者を民間に出すことは部内的に説明がつかないという、実にお役所的な理由だった。

つまり、階級は、もっと下で、要職に就いていない者であれば良いということである。

昇任はさせない、でも外に出すのは惜しい。

私の意思は全く尊重されておらず、ただ私は飼い殺しに遭っているようなものと憤慨した。