戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第230 -転職先での辛い経験-

今思うと完全にミスマッチだったと思う。

会社にとっては、元幹部自衛官はこんなに仕事が出来ないのか?と思っただろうし、私にとっては、新入社員をきちんと育成する余裕が全くない会社だった。

顧客から受注のファックスを受け取って、端末のシステムから発注、輸送手配を行う一連の業務が上手く覚えられなかった。

自衛官の時は、こんなファックスを取ったり、システムに入力したりする仕事は女性事務官がやる仕事であり、幹部自衛官がする仕事ではなかった。

何度も同じことを聞かれる先輩女性社員からは「これならアルバイト雇った方がよっぽどマシだわ」と叱責を受ける始末だった。

短いタイトなスカートを履いた小綺麗な女性のこめかみに※マークが浮き上がるのを私は初めて見た。

ある日、部長から全く理解不能な業務指示が突然メールで送信されてきたとき、私は机の前で2時間、思考停止状態となってしまった。

軽い心的ストレス反応が出たのだと思う。

こんなことは長い自衛官生活で一度も無かった。

昼食は、目の前の日比谷公園で1人で菓子パンを食べていた。

その時だけが唯一気持ちが和らぐからだ。

ゴールデンウイーク前に、部長と面談があった。

これまでの私の勤務状況を見ると及第点は付けられないとのこと。

初めは営業担当を考えていたが、アルミ製品を取り付けるための特殊な器具の修理担当はどうか?との提案だった。

修理担当は70歳近い年老いた社員が担当していた。

私はその提案を受けるしか無かった。

もし受けなければ、試用期間の終了とともにクビになる恐れがあったからだ。

部長の前で涙がポロポロ落ちてきた。

その様子を見た部長は「公務員はメンタルが弱いからなあ」と呟いた。

入社して2週間で自衛隊を辞めたことを後悔し、1ヶ月後には、この会社を辞めたくなった。