戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第238 -任侠者の男気-

自衛隊を辞める前、自宅近所の居酒屋である男性と知り合いになった。

見るからにカタギで無いような10歳以上年上の年配の人だった。

私が防大出身の戦闘機パイロットと分かると、えらく気に入ってくれた。

その人は、私くらいの世代なら聞いただけでビビる都内の超硬派私立大学出身だった。

いつもその人は「大学の同期生は皆、警察官かヤクザになったと」豪語していた。

現在、表向きは観光業を営んでいるが、裏の顔は少し怪しかった。

顧客はもっぱら中国の富裕層だった。

その富裕層に対して夜の観光も提供していおり、その内容は少しグレイであることは容易に想像できた。

とにかく羽振りが良く、居酒屋では見知らぬ客にもよく奢っていた。

私も、フィリピンパブに誘われて、そこで2人で豪遊したことがある。

お会計の17万円はその人がキャッシュで全て払ってくれた。

求職活動中に、その人にも会って、何か職を紹介してくれないか相談した。

失業者となってしまった自分の運命を呪い、こうなったならヤケクソでヤクザにでも何でもなってやろうと思っていた。

結局、その人は私に対し、表向きの観光業の営業職の話しかしてくれなかった。

きっと、元幹部自衛官パイロットに、グレイな夜の仕事を斡旋してはいけないというその人なりの男気だったんだろうと思う。

そして、その人から「何事も自分自身の手で掴み取るしか無い」というエールをその人から受け取った。

きっとその人は、そうやって今の地位を築いたのだろう。