戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第236 -宇宙ベンチャー-

名古屋の宇宙ベンチャーの社長さんに働き口がないか頼んでみた。

自衛隊を退官する前、浜松基地で勤務していた時に、宇宙ベンチャーの説明会に参加して以来の関係だった。

スポンサーである大手航空会社から資金を調達に成功した直後であり、私がバイトをしながら職を探しているのであれば、しばらくウチでバイトとして雇ってもいいと言ってくれた。

私はキャリーケースに荷物を詰めて名古屋へ向かった。

現地に到着して私は愕然とした。

オフィスといっても、それは港湾沿いの古びた倉庫だった。

かろうじて机と椅子がある程度で、その他は何も無かった。

私の最初の仕事は、自分の寝室となる部屋の網戸と出入り口のドアを製作することだった。

慣れない電動工具で指を切断しそうになりながら黙々と作業を続けた。

もちろん倉庫の中はエアコンも無い。

じっとしていても体力を消耗する日々が続く。

倉庫の2階は私の寝室となった。

正直なところ北朝鮮の強制労働施設よりも悪かった。

そして朝になると足が痒くてたまらなかった。

途中で、米国から韓国籍の大学生がインターンとして合流した。

息子とさほど変わらない年代の大学生と不思議な共同生活が始まった。

毎晩、社長さんの車を借りて2人で銭湯に通った。

昭和ノスタルジック満載の日本式の銭湯に大学生はどう感じたのだろうか?

夜のコインランドリーでお互いの洗濯を待ちながら、車の中で好きなアニソンやKポップの話をした。

48歳。

まだ、暗闇の中にいた。