戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第2-防大志望の動機-

防大への進学を薦めたのは父だった。

近くに陸上自衛隊の大きな駐屯地があり、近所には自衛官がたくさん住んでいた。

自衛隊さん」と呼ばれ、子供のころから自衛隊は身近な存在だった。

しかし、当時の自衛隊に対する社会の見方は今とは若干違っていた。

高卒で自衛隊に入るということは、民間会社にも就職できなかった落ちこぼれという見方が一般的だった。

父は自衛官でもないし、親戚にも自衛官は誰もいなかった。あとから母から聞いた話だが、若いころの父は太平洋戦争の戦記物を取り上げている雑誌を読むのが好きだったらしい。

そのような父にとって息子を「将校殿」にするのは夢だったのかもしれない。

地元の進学校に入学した私はまだ高校1年生だったが、父親は地元で自衛官の募集業務を担当する陸上自衛隊地方連絡部、通称「地連」に電話をかけ、自宅に呼んだことがある。

直ぐに「地連のおじさん」がやってきて、私の父と私の前に防大のパンフレットを置くと、説明を始めた。

一通りの説明が終わると、私は地連のおじさんに「どうですか?」と聞かれた。

しかし、私はそもそも防衛大がどのようなものなのか全く理解しておらず、「まだ1年生なので…」と困り顔で答えるのが精いっぱいだった。

それ以来、父はよく私に「防大生は女性に人気があり、女性たちが校門の前で防大生が出てくるのを待ち構えているらしい」と嬉しそうに話してくれた。どうやら週刊誌のゴシップ記事にそのように書いてあったらしい。

それでも私は次第に防大に惹かれていくのであった。