戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語③ -絶対行きたくない-

高校2年になると、防大には絶対行きたくないと思うようになっていた。

当時私はバイクが好きでたまらなかった。

私は夏休みに母が務めるスーパーでアルバイをして中古の50㏄のバイクを買った。

尾崎豊を聞きながら、地元から遠い海の見える町まで50㏄のバイクでよく出かけた。

海岸の朽木に腰掛けながらタバコを咥え、キラキラ光る海辺をずっと見ているのが好きだった。

そこに若い女性でも現れれば、もはや「片岡義男」の小説の世界だった。

そのような状況だったため、私の志望大学は、いつしか静岡大学工学部に変わっていた。静大工学部は浜松市に所在し、そこにはオートバイを製造しているスズキやヤマハの会社があったからだ。

いつしか私は旅行ガイドの本のページをめくりながら、縁もゆかりもない温暖な土地で自分のキャンパスライフを送る姿を夢想するようになっていた。

しかし、高校3年になると、いよいよ志望大学を決めなければならなかった。

最終的には防大が第一志望になっていた。

あまり裕福な家庭環境ではなく、金銭的に厳しい状況だったが、防大を第一志望としたのは単純に戦闘機パイロットになりたいと思ったからだ。

「地連のおじさん」が置いて行った防大のパンフレットとは別に航空自衛隊パイロット募集のパンフレットがあった。

そのパンフレットの表紙に戦闘機の前でヘルメットを抱えたパイロットの写真が掲載されていた。

それを見ると私は「自分の進む道はこれだ!」と直感した。

クラスメートの多くは、医学部や有名国立大を目指していた。しかし、成績がパッとしない自分にとっては防大に進み、戦闘機パイロットになることだけが他の同級生に負けない選択だと思った。

毎日、受験勉強の合間に、そのパンフレットを見ては、自分が戦闘機を操縦する姿を夢想して胸が高鳴った。