防大生の時は一度も任官拒否をしようと思わなかった。
バブルという時代がそうさせたのか?自衛官でいることが馬鹿らしく思うようになっていた。
K君とは防大3年時、共通の友人を介して友達になった。
渋谷で行われた合コンに一緒に参加したりと、少しチャラい似たような価値観を持っていた。
K君と意気投合して、休日には本屋で就活情報紙を立ち読みし、特に商社のページを見ては二人で胸をワクワクさせていた。
防大卒の少し先輩に任官しないで大手商社に就職した方がいた。
当時、その商社が英国からディスコを輸入したと話題になった。
そのディスコが「ジュリアナ東京」であり、その防大卒の先輩が担当者だった。
のちに彼は六本木「ベルファーレ」を作り、その後、日本における介護事業の先駆けとなる会社「コムスン」を作った。
私とK君は、高級外車を乗り回す羽振りのいい若き商社マンに夢を見た。
早速、昼休みになると、本部庁舎の前にある電話ボックスに二人で入り、同期の伝手で大手商社に勤める別の防大の先輩に連絡をを取った。
その先輩は「今から自衛隊を辞めて就職するとなると中途採用扱いになる。その場合、新卒と比べて差ができてしまう。例えて言うならば、君たちだけは陸上のハードル競争をさせられるようなものだ。」と語った。
現実は難しかった。