戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語第25 -護衛艦よりアイスクリーム-

普通の大学生なら7月から夏休みだが、防大では7月の1か月間は夏季訓練期間に突入する。

まだ自衛隊を知らない私たち1生は、この訓練期間中に陸海空自衛隊の部隊研修に赴く。

茨城県航空自衛隊百里基地に行って私はこの時初めて高校生の頃から憧れていたF-15戦闘機を間近で見た。

エプロンで金属音の唸り声を上げる戦闘機に畏怖の念さえ感じた。

陸上自衛隊の部隊研修は富士山の麓にある部隊に行き、戦車や装甲機動車の体験乗車を行った。

戦車の上部、砲塔部分の後ろに太い綱が取り付けられていて、そこに3人ずつ、しゃがんでしがみつく。

エンジンの熱い排気熱を浴びながら凸凹道を走る戦車に振り落とされないようにみんな一生懸命しがみつく姿は、まるでマンガのようで滑稽だった。

海上自衛隊の部隊研修は護衛艦に乗船しての駿河湾体験クルーズだった。

船なんて修学旅行の連絡船でした乗ったことがなくとても新鮮だった。

しかし、私たちはすぐに海に飽きてしまっていた。

そうなると私たちの関心は別のところに向く。

私たち1年生は護衛艦の中の食堂で販売しているアイスクリームを目ざとく発見すると、部隊研修そっちのけで、食堂で束の間の甘味を楽しんだ。

そしてその姿を見つけた指導教官にこっぴどく叱られる。

「貴様ら何しに来たんだー」と。

防大1年生の国防意識なんてこんなものだった。