夏休み明けは、一学年の気が緩んでいないかと、上級生の指導が一層厳しくなる。
そんな中、同じ小隊のO学生が上級生に私服外出をしていることがバレてしまった。
その夜、O学生と同じ小隊の一年生全員(二十数名)が隊舎の屋上に呼ばれた。
幹部自衛官の指導教官に見つからないように一年に制裁を加えるためである。
屋上には、4学年十数人が待ち構えていた。
O学生の規律違反の罰として連帯責任で全員腕立て伏せを命ぜられる。
暗い屋上で号令に合わせて大人数で腕立てを行い、それをまた大人数の4年が取り囲む異様な光景が始まった。
連帯責任とは言え、私たちはまだ気楽なものだった。
O学生の周りには4、5人の4年が取り囲んでいた。
普段鍛えている若者でも100回くらいがが限界である。
体力の限界となって腕立ての姿勢を崩してコンクリートの床に倒れこむと、O学生の胴部に4年の蹴りが飛んだ。
この間、O学生は、同期に迷惑をかけたことに責任を感じていた。
腕立ての姿勢が崩れる時に、額をコンクリートの地面に意図的に打ち付けていた。
額から血を流せば、この制裁は終了になり、皆が解放されるだろうと思って。
どれくらいの時間がたっただろうか。
制裁は終わり、屋上から各自の居室に戻された。
何事も無かったように、普段通りの学生舎生活が再開された。
こうして同期の絆が深まっていった。