戦闘機パイロットの夢を追いかける青春物語

戦闘機パイロットになる夢を追いかける青春物語

防衛大学校物語 第54 -酔いどれ学生長-

学業および訓練成績の優秀な者は、「学生長」という役職に指名される。

「学生隊学生長」は全学生約1600名のトップであり、生徒会長のようなものであった。

その下に大隊学生長、中隊学生長、小隊学生長がある。

中隊学生長以上は、本当に優秀な者がついていた。

私は、4年生の1学期に3年生を束ねる小隊学生長に選ばれた。

1年生の小隊学生長は責任重大であるが、私が選ばれた小隊学生長は最もイージーな学生長だった。

しかし4年生のうちの3分の一は何の学生長にも選ばれないので、選ばれるだけましな方だった。

実際、3年生に対し指導することは何も無かった。

最初の訓示で「くれぐれも事故(悪いこと)を起こさないように!」と一言っただけだった。

あとは自由にさせていた。

それどころか、自分自身の生活態度が酷かった。

夜の自習時間中は机に向かって勉強をしていなければならない。

私は、机の引き出しにいつも「いいちこ」と「カルピス」を隠し持っていて、自習時間が始まると自分で「焼酎カルピス割り」を作って飲んでいた。

「自習前段終了」の放送がかかり、廊下に出ると、もう出来上がっていた。

配下の3年生より先に4年の小隊学生長が「飲酒事故野郎」になるところだった。

どうしてこんなにいいかげんなのか?

もっとしっかりしていたら、もっと出世しただろうに。